
昆野 安彦
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私は元来保守的で,新しいことに挑戦しようとする気持ちがあまりない。山なら各地の山に登るよりも,通いなれた大雪山に「通勤」している方がずっと性に合っている。
酒の席でもそうだ。やむを得ず出なければならない各種の宴席でも,席を立ってお酒を注いで回るというようなことはまずやらない。気がつけば,最初に座った場所にずっと最後までいた――ということがほとんどである。
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回顧調になるが,大雪山でも若い頃はいろいろなことに関心があった。たとえば東大雪や十勝連峰での生き物調査だが,この頃はどうもそうしたことへの関心が弱くなった。
はっきり書いてしまうと,大雪山に行くのだったら一番好きな場所にずっといたいという想いがこの頃は強い。その場所とは,白雲岳避難小屋である。
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大雪山初登山は1979年3月,大学4年の時だったが,白雲岳避難小屋に初めて泊まったのは1986年6月のことだった。以来,通算して300泊余りをこの小屋で過ごしてきた。
2004年は5月上旬も詰めていた。連日の吹雪に身動きできない日々が続いたが,シュラフの横に置いたペットボトルの水が凍る厳しい寒さよりも,この快適な山小屋に一人でいられる喜びの方がずっと大きかった。下山する最後の日になって,快晴の中に浮かび上がった白一色のトムラウシ山の絶景は,大切な思い出として忘れることが出来ない。
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この愛すべき白雲岳避難小屋での生活で最近大きなウエートを占めているのがナキウサギの観察である。場所は伏せるが,この小屋の周囲にナキウサギがよく出てくる場所がある。私は時間が許す限り,その場所に出かけてこちらの期待 |
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どおりに出てくれるかどうかは分からない気まぐれなナキウサギの姿を,何時間もただぼんやりと待ち続ける。
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その場所ではナキウサギは6月から10月まで顔を出してくれるが,遭遇する確率には月別に違いがあるように感じている。
一番確率が高いのは9月である。これはきっと,冬越しを間近に控えた彼らが貯食に忙しいためだろう。一方,6月や7月はあまり遭遇できない。5時間くらいその場所にいても,1回しか見なかったことが多い。
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ナキウサギの季節などという,ちょっと洒落たタイトルを付けてしまったが,この小動物を観察するのにもっともふさわしい季節は,やはり9月の紅葉の頃かなと思ったりしている。
今年からナキウサギの個体数調査をこの場所でやろうと思っているが,データをとるのなら出現頻度の高い9月が一番いいいかなと考えている。そしてデータがたまったら,きちんと学会に報告することにしよう。
いつまで大雪山に登ることが出来るのか――それは神のみぞ知ることだが,体力と気力が続く限り,大雪山登山を毎年の楽しみとして一日一日を過ごしていくことにしよう。

大雪山のエゾオコジョ 筆者撮影
(ナキウサギの天敵・・かな?) |