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アンドリュー・スミスさんの講演「高原ずまいのナキウサギ〜その生態と保護」
アリゾナ州立大学教授・アンドリュー・スミス先生(以下スミスさん)が今回来日されたのは、8月初めに札幌で開催された国際哺乳類学会に参加するためです。そして、8月6日、スミス先生のご好意で、ナキウサギふぁんくらぶのために特別に講演をしていただくことができました。専門的なお話でしたが、京都からかけつけてくださったナキウサギの専門家、川道武男先生による通訳ということもあり、たいへん楽しくわかりやすい講演になったと思います。スミス先生のたくさんのスライドで、高原のようすや、ナキウサギが大きな家族グループで仲睦まじく暮らすようすが、とてもよくわかりました。子ウサギが鼻と鼻をこすりあったり、毛づくろいしあったりする愛らしさに、会場も思わずうっとり・・。
お話の前半は、クチグロナキウサギの生態と行動についてでした。今回は生態についてのお話の一部をご紹介し、次回のつうしんでその残り(繁殖や社会行動など)と、中国のナキウサギの保護の問題をご紹介します。
クチグロナキウサギ(鼻から口にかけて黒いのでこの名前がついています)がいるチベット高原は、標高4000メートルととても高い標高にあり、年平均気温が0度以下と、とても寒いところです。青海湖とシェンドウの今まで二つの調査地をもっていましたが、今は三番目の調査地で研究しています。ナキウサギの耳にすべてタグをつけて行動を記録するのです。クチグロナキウサギは、大きな家族グループが地下に穴を掘り、とても高い生息密度で暮らしています。穴のシステムは、毎年同じ家族が使います。すべてのメスは夏に何回も、3回以上出産します。アメリカナキウサギは、最終的に平均2頭しか残りませんが、クチグロは多産で、たくさん何回も生んで、20頭くらい残ります。しかし、冬は雪が少ないので寒さが厳しく、死亡率が高いのです。
幸運にも冬に生き残った家族は(少しだけ分散するが)、ほとんどその場所にとどまります。若い個体はたいてその場にとどまります(58%)。分散するのは、たいていオスです(オスの83%。メスの32%)。分散とはいっても、遠くへは行きません。オスは平均二つ隣の行動圏へ、メスは1.1隣の行動圏へ移動します。分散時期は交尾期の直前です。なぜ分散するのか。生態学者が一般的にあげる三つの理由について調査しましたが、@食料や巣の資源のあるところに分散しています。A交尾相手の競争は、分散の理由にはなっていません。メスが少ないところにも行くからです。B 近親交配を避けるというのは、これから遺伝的研究をするので、今は結論をだせません。
以上はスミスさんの研究のほんの一部のご紹介です。今回の講演によっても、中国の(アメリカもですが)ナキウサギの生態が、何千時間という地道な調査によるデータの蓄積によって、科学的に解明されてきていることがよくわかりました。
(市川利美) |
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講演するスミスさんと通訳の川道さん。 |
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