十勝自然保護協会会長安藤 御史
大雪と石狩の自然を守る会代表寺島 一男
北海道自然保護連合代表寺島 一男
ナキウサギふぁんくらぶ代表市川 利美
国際自然保護連合・生態系管理委員会
東アジア地区副委員長河野 昭一
日本環境法律家連盟理事市川 守弘

十勝東部森林管理署の対応への抗議および要望


私たちは、9月11日付けて貴職に対して「十勝東部森林管理署管内における伐採についての申入れ」を行い、伐採計画の根本的見直し、希少動植物の生息地の保全、エゾマツの伐採の見直し、風穴の保全などについて申入れました。

ところが十勝東部森林管理署長はこの申入れについて、10月3日に十勝自然保護協会の佐藤事務局長に電話で「意見として受け止めるが、文書での回答はしない」との見解を伝えました。これは、国民の財産である国有林の施業について、国民の意見を無視するに等しい態度であり容認することはできません。このような姿勢に強く抗議するとともに、再度文書での回答を求めます。

なお、私たちは昨年の伐採現場および今年の伐採現場を視察し、天然林において以下のような状況を確認しました。このような伐採は生物多様性条約に違反するばかりでなく、保安林では森林の持つ公益的機能を重視するという林野庁の方針に反し、生態系の破壊を招いています。

したがって、以下について貴職の見解を求めるとともに、天然林でのこれ以上の伐採を中止し、森林生態系の保全に努めることを申し入れます。

1.木材生産重視の伐採による天然林の破壊

伐採された林班の伐根は、大径木が主体であり、木材生産重視の択伐が行われていることは一目瞭然です。このような伐採により、中・小径木が主体の貧弱な林相になっているばかりか、場所によっては立木の密度が少なくスカスカの状態になっているところもあります。

大径木の伐採は、その地域に適応した遺伝子を持つ優良な母樹を喪失させます。健全な森林生態系の維持のためにも母樹を優先的に伐る択伐は中止すべきです。とりわけ更新困難なエゾマツは伐採により衰退しています。


2.違法伐採の疑惑

収穫木にはナンバーテープと青いスプレーが塗布されていることになっていますが、これらがついていない木が伐採されていたほか、スプレーが見当たらない伐根も複数の林班で確認されました。収穫予定木ではない木を伐採していると思われますが、このような伐採は盗伐にあたり犯罪行為です。森林管理署は伐採にあたり跡地検査を行っているはずですが、このような伐採についての説明を求めます。


3.作業道および土場からの土砂の流出

現在行われている施業は、広大な土場から四方八方に作業道を張り巡らさせ、伐採木を重機で搬出する方法ですが、重機で表土を大きく撹乱すために林床の生態系の破壊や土砂の流出を招いています。土壌層の撹乱、破壊は、埋土種子集団を破壊、土壌形成に欠かせない土壌動物相の破壊・根絶に繋がり、森林の再生を極めて困難にしています。作業道や土場に沢水が流れ込み、河川に流入している場所が随所に見られます。さらに大雨によって作業道が削られ、土砂が河川に流入することによって洪水を誘発し、ダムへの土砂の堆積を促進させ、河川生態系の破壊をも誘発しています。「保安林」でこのような伐採を行うことは違法行為です。断じて許されません。


4.クマゲラ生息地での伐採

伐採現場にはあちこちにクマゲラの食痕が確認されたほか、鳴声や姿の確認された場所もありますが、クマゲラの生息地保全に配慮して施行しているとは思われません。これは生物多様性条約および林野庁の方針に反するものです。


お忙しいところ恐縮ですが、12月15日までに文書にて下記宛てに回答くださいますよう、お願い申し上げます。


080-0101 河東郡音更町大通10丁目5番地

佐藤 与志松方 十勝自然保護協会 Tel & Fax 0155-42-2192

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