北海道自然保護連合代表寺島一男
十勝自然保護協会会長安藤御史
ナキウサギふぁんくらぶ代表市川利美
大雪と石狩の自然を守る会代表寺島一男
日本環境法律家連盟理事市川守弘

ナキウサギおよびクマゲラ生息地での伐採中止の申入れ


私たちは、日高森づくりセンターの管轄地であるえりも町目黒の153林班で動物の調査を行ったところ、伐採予定の立木の根元でナキウサギの糞を確認したほか、クマゲラの食痕のある立木にも収穫のためのナンバーテープとスプレーがつけられているのを確認しました。収穫調査のナンバーテープとスプレーがその付近の立木につけられており、ナキウサギとクマゲラの生息地一帯で伐採が予定されていることがわかりました。

日高森づくりセンターは、伐採にあたりクマゲラやナキウサギなどの希少動物の調査を行っていないものと思われますが、施業によりこれら希少動物の生息に重大な影響を与える可能性があります。

今日、環境問題は人類にとって喫緊の課題となっています。このためわが国は、1993年に生物多様性条約締約国となりました。生物多様性条約は、生物の多様性の保全、つまり生態系や生息地を保全することを目的としています(同条約第1条)。わが国がこの条約を締約したということは、行政にとって生態系や生息地の保全が責務になったということであり、自然保護の枠組みのなかで森林施業をしなければならないということを意味します。

北海道においては、従来の木材生産重視から公益的機能重視へと、方針の全面転換を図りました。生物多様性の観点から、また公益的機能重視という観点からも、希少な動植物に配慮した施業がなされなければなりません。

北海道水産林務部の『道有林の施業指針』においても、「施業にあたっては、専門家の助言を受けるなどして、流域の自然環境への配慮に努める」とした上で、具体的に「野生生物の移動経路や生物多様性の保全に重要な森林については、森林の取り扱いによる森林環境を最小限に止めるとともに、住みかとなる枯損木、空洞木や木の実などの食料を供給する食餌木を残置するなど、野生生物への配慮に努める」と明記しています。

さらに同施業指針では、例えばクマゲラについては、「巣を中心とする周囲の住みかの範囲は伐採せず」「トドマツで胸高直径が40cm〜50cm程度となると、不朽が進み、アリが巣を作るようになるので給餌木として残すよう配慮をする」と具体的な施業の仕方も明記しています。

また、152林班52小班において、集材路新設時にナキウサギの生息するガレ場を壊したことについて、道有林課は「配慮が足りなかった」と認めています。

以上のことを踏まえ、貴職に以下の申入れをいたします。



  1. 153林班のナキウサギ生息地およびクマゲラ生息地での施業を直ちに中止すること
  2. 日高森づくりセンター所管地での伐採にあたっては、国および道のレッドデータブックに掲載されている動植物およびナキウサギの調査を行い、生息・生育地を保全すること

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