貴委員会が1月24日付で公表された上記報告書に対して、私たちは、そもそも質問内容に大きな問題があったことに抗議すると同時に、少なくとも9市町村がナキウサギの天然記念物の指定を望んでいるという結果を尊重し、また、国民の声を最大限尊重して、種指定に向けて手続きを進められることを強く要望します。

<抗議事項>

1 市町村に義務を転嫁した調査

今回の調査では、市町村に財産権の尊重や公益との調整を図る義務があると虚偽の説明をした上で、それを前提にした質問を、非公開で補足質問としていたことです。

公益との調整は文部科学大臣に課せられた義務です。市町村に協力義務があるというなら、文化庁や道教委の義務にはなぜ一言も触れないのでしょうか。

自らの責任には目をつむりすべてを市町村に丸投げし、しかも、必要以上に市町村の義務を強調し、指定の要望を躊躇させようという意図が露骨です。

特に、非公開でなされた補足質問では、指定を要望した市町村に対して、

  1. 「貴市町では、・・財産権を尊重するとともに、国土の開発その他公益との調整を行うなどして、国に対して「指定要望」を行う意思をお持ちですか。
  2. 種指定について、公益との調整が整わない場合、貴市町の文化財保護条例に基づき、独自に(市や町の)天然記念物に指定する考えをお持ちですか。

と質問していました。これは町の責任で公益との調整をせよ、もしできなければ町の天然記念物にせよという、非常に矛盾した、嫌がらせ的な質問で、道教委の体質を浮き彫りにしています。

(にもかからず9市町村もが指定を要望した結果の重みは大きいと思います。)

2 道の方針の欠如

道教委はかねてより、私たちナキウサギふぁんくらぶに対して、一つの町でも要望があれば動きますと言明していましたが、今回の意向調査の結果に対して、自らの「意向」については一切明らかにしていません。今後の取り組みについて、「結果を文化庁に報告するとともに、道教委ホームページ上で公表する」ことと、「エゾナキウサギの保護」について、「市町村との意見交換、情報交換をし知事部局と連携し文化庁に相談する」とはありますが、指定について、道教委としてどのように判断し取り組むかが全く不明です。これは、道民、国民に対して極めて不誠実な対応です。

これでは、意向調査前の道教委の姿勢と変わりはなく、一体何のための意向調査だったのか、世論に押されて形だけ調査したに過ぎないのではないかといえます。


3 市町村には権限も義務もない

これまで何度も主張してきているように、ナキウサギの天然記念物指定は、一市町村のレベルではなく、国と北海道が指定手続きにもその後の保護についても責任をもつべきです。

今回の意向調査でも、市町村からは、専門家や必要な情報を欠くため国や北海道でまず調査すべきであるという意見が多く見られます。

この意向調査では、ナキウサギの生息分布についてのアンケートがあり、市町村はごく短期間に、主として登山者や森林管理署等に対する聞き取り調査を中心に分布調査をせざるを得ませんでした。

しかし、専門家をもたない市町村が正確な生息情報を得ることはおよそ不可能です。1991年の道によるナキウサギ報告書においても、そうした聞き取り調査結果に対しては、専門家による検証がすべてなされていたのです。しかし、私たちのこうした批判に対して、道教委は、分布については市町村の主観に委ねるという非常に非科学的な見解に固執しています。

また、保護の必要性の判断についても、市町村の主観に委ねています。例えば新得町は自分の町内のナキウサギは保護されているから、エゾナウサギ一般についても「保護の必要がない」と回答した唯一の町ですが、新得町には、ナキウサギふぁんくらぶ(口頭)及び十勝自然保護協会(06年10月5日付書面)から、特別保護地区や天然保護区域に含まれていない場所で、生息密度が低く保護の必要が高い生息地の存在が指摘されているので、それを無視した新得町の回答はたいへん恣意的です。

その他、市町村の回答には一つ一つ科学的検証が必要な点が多いので、それだけですべてを決定することは認められるべきではありません。道教委と文化庁が主体的に、科学的に指定について調査、検討、調整をするべきです。


<要望事項>

1 調査結果と国民の声を最大限尊重せよ

今回の再調査で少なくとも9市町村が指定を要望しているという結果が出ました。9市町村のほか、指定の是非を決めていない7市町村の意見も多くは基本的に指定に賛同しています。以下のとおりです。

  1. 上川町は、自分の町では必要とは思わないが他の地域での生息が確認され指定が決まるのであれば種指定が望ましいと回答。
  2. 富良野市は、ナキウサギは他の種指定の天然記念物の動物と比べてなんら遜色がない。ただ、学術的調査が不十分であるし、国や道が聞き取りやアンケートだけに頼らず主体的に取り組むべきであると回答。
  3. 東川町は、指定に依存はない。北海道と関係市町村で十分協議して決めてほしいと回答。
  4. 置戸町は、置戸町では保護されているが、全道に生息しているから1市町村の問題ではない、北海道としてどう保護するのかを考える必要があると回答。

これらの意見は総じて、指定を望ましく思ってはいるが、北海道が積極的に取り組むべきという意見だといえると思います。

また、指定を求める市町村のうち、「生息地指定」と回答した町が3町ありましたが、このような局所的な保護ではエゾナキサウギの保護としては全く不十分です。今回の調査で、種指定が必要であることがいっそう明らかになったといえます。

道教委がこの結果を重く受け止めて、今後、4万3000名を超える署名に代表される国民の声と、大雪と石狩の自然を守る会、北海道自然保護協会、十勝自然保護協会などのNGOの種指定を求める意見を尊重して、手続きを進められるよう強く要望いたします。


2 道教委は主体的に手続きを進めよ

天然記念物指定の是非の判断、公益との調整、保護策、分布・生態調査等について、 北海道教育委員会は主体的に判断し手続きを進めることを求めます。


3 北海道の意向を回答せよ

市町村の意向調査をした以上、北海道の意向もはっきりさせるべきだと考えますので、別紙の「意向調査」にお答えください。

本日、記入いただくか、2月16日夕方までに回答の上、ファックスでお送り願います。

質問事項は、市町村に対するものと同じですので、「市町村」を「北海道」と読み替えてお答え願います。補足調査事項についても回答願います。分布調査だけは意味がないので、はずしました。


添付書類

・「新得町のナキウサギ生息地について」(十勝自然保護協会)

新得町教育委員会教育長 佐々木裕二 氏宛 06年10月5日

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