1. 佐幌岳における自然環境上の特性・位置等から拡張を伴うこれ以上の開発は行うべきでなく、逆に現状の不適切な土地利用について自然環境の回復・保全を図るべきである。


    佐幌岳は北海道の中軸を成す日高山脈の北端にあって、大雪山系を結ぶ要衝の地にある。佐幌岳を中心に亜寒帯・亜高山帯の植生が広がり、中軸部の南部と北部の自然植生をつなぐ重要な地帯になっている。同時にこれらを介して一部希少種を含む哺乳類・鳥類・魚類、また両生類・は虫類、昆虫などが生息し、これらの重要なコリドーになっている。

    これら動植物等の生息・繁殖・つながりの保持には、緩衝帯を含む広範囲な保全が重要で、山頂近くまでスキー場開発が広がっている現状を考えると、これ以上の開発地域の拡大は行うべきでない。

    佐幌岳を含む当該地域の冬期の気象概況は、当該会社の調査報告書(2008年)にあるように「日高連峰、大雪連峰北西部からの北西風により、稜線越しの厳しい寒風が吹走するため寒気は厳しく、雪は一般に少なく林地の土壌凍結は深い」とあり、その傾向が顕著に典型的に現れるところが佐幌岳であるところからスキー場の適地とは考えにくい。人工降雪機を運用してまでのスキー場維持は、温暖化対策の方針に逆行するばかりか、雪に恵まれた道内の大型スキー場が集客に苦労している現状を考えると、立地条件的に長期的な展望を持ち得ない。

    観光立国推進基本計画の根底にあるのは、観光の対象となる自然環境を損なわない利用が前提であり、リゾートは総花的な施設の建設ではなく、各地の適地と役割を考えた個性的な立地が求められている。その意味で佐幌岳のスキー場はむしろ規模を縮小して不適切地の自然回復を図るべき対象であっても拡大を図るところではない。


  2. 開発予定区域は、佐幌岳ではまとまった天然林や天然生林が残る貴重な場所であり、大規模な無立木地を生み出す事業の実施は水源涵養や国土保全上好ましくない。


    当該事業計画の北斜面区域は、上部はダケカンバ、トドマツ、エゾマツ等が混交する天然林及び天然生林(齢級17)が残る佐幌岳では重要な場所である。また下部は、トドマツ主体の人工林(齢級8~9)が育っている。事業の実施によってこれらの森林がトータル約30㌶消失することになり、国有林に与える損失は大きい。また、当該調査報告書が「哺乳類、鳥類、両生類、魚類、昆虫類の一部は、事業実施が生息環境へ影響を及ぼすことが考えられる」と記しているように、野生生物に対する影響も避けられない。

    また、計画区域から新幌川、北新内川、紅葉川、上新内川、上新内沢川の5本の川が佐幌川に流入している。佐幌川には洪水調節、防災を目的とした重力式コンクリートダムが設置されており、河川管理と治山に齟齬をきたすことになり、国土保全上好ましくない。


  3. 開発行為に伴う環境調査が不十分なうえ事実隠蔽の指摘もあり、現状のまま開発行為を認めることは生物多様性がますます重要視される世界的な潮流の中で大きな禍根を残す。


    貴社が新得町において2010年4月12日に実施した住民説明会、5月17日の意見交換会で、調査報告書に記載されていなかった佐幌岳北斜面のナキウサギ生息の事実を知っていたとする発言は、調査報告書の真実性を揺るがす大きな問題で、このような調査報告書を前提にした開発行為は到底許されない。

以上

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